黒井緑朗のひとりがたり

きままに書きたいことを書き 云いたいことを云う

九月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

昼の部の幕開きは『金閣寺』から。 脳梗塞からのリハビリ中の中村福助、五年ぶりの出演となる舞台である。自身の歌右衛門襲名が発表された直後におきた悲劇。こうして歌舞伎座でふたたびその姿を目にするだけで感慨深い。役は動きも科白もわずかな慶寿院だが…

『翁』『井筒』『乱』(国立能楽堂)

昭和五八年九月に開場した国立能楽堂開場が、三十五周年を記念して催す公演のひとつ。能楽界を代表する重鎮たちの競演や、普段は見られない特殊演出が見ものである。 『翁』は、珍しい「松竹風流」の小書での上演。金剛永謹の翁は堂々たる体躯、朗々とした声…

同じ顔の男たち〜『寝ても覚めても』を観て

わたしたちは、目の前の友人を指して「あなたはタレントの誰々に似ている」などという話をすることがある。もちろん本人や周囲の賛同を得られることもあるが、云われた本人はもちろん、周りの誰もそうだと思ってくれないような場合も珍しくない。 ある人物と…

九月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

吉右衛門の十八番ともいえる『俊寛』。初代吉右衛門のあたり芸だったこともあり、当代も頻繁に取り上げるのでまたかの感はあるが、これがまた傑作である。 『俊寛』は義太夫狂言のなかでもいささか特殊な演目である。長い間の貧しい島暮らしゆえに体力の衰え…

川の流れのように〜『手をなくした少女』を観て

話題になっている『大人のためのグリム童話〜手をなくした少女』を観る。 昔から知られているグリム童話『手なし娘』を現代に蘇らせた、セバスチャン・ローデンバックのアニメーション映画だ。監督自身がひとりですべての作画を手がけたというから驚きだ。ク…

八月納涼歌舞伎第三部(歌舞伎座)

『盟三五大切』の久々に歌舞伎座での上演である。幸四郎をはじめとした若手中心の一座だが、間違いなく今月の白眉であり、また近年上演された南北作品のうちでも特筆すべき舞台であった。 四世鶴屋南北は、少し遅れて活躍した河竹黙阿弥とともに江戸の「悪」…

八月納涼歌舞伎第一部(歌舞伎座)

三部制の八月歌舞伎座。まずは第一部を観る。 『花魁草』は昭和56年に七世梅幸にあてて北条秀司が書き下ろした新歌舞伎。新派でも一度取り上げられたのち歌舞伎としては7年前に新橋演舞場で久しぶりに再演され、今月が再々演である。 江戸をおそった地震と火…

サマータイムとは誰の「時間」なのか

「自民党は2020年東京五輪・パラリンピックの猛暑対策として、時計の針を早めるサマータイム(夏時間)導入の検討に入る。安倍晋三首相(党総裁)の指示を受けたもので、早ければ秋に予定される臨時国会に関連法案を提出し、19年の試験実施を目指す。ただ、…

アンドロイドオペラ ”Scary Beauty"(日本科学未来館)

2018年7月22日 (日)20:30日本科学未来館1Fシンボルゾーン 【出演】コンセプト、作曲、ディレクション、ピアノ:渋谷慶一郎ヴォーカル、指揮:オルタ2演奏:国立音楽大学学生・卒業生有志オーケストラ ロボット学者石黒浩の作ったアンドロイド「オルタ2」に…

七月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

市川海老蔵を中心とした座組が定着するようになった7月の歌舞伎座だが、長らくそこを指定席としていた三代目市川猿之助(現・猿翁)時代の伝統を引き継ぐかのように、海老蔵もまた創意ある演出による復活狂言や、エンターテインメント性の強い舞台を上演し続…