黒井緑朗のひとりがたり

きままに書きたいことを書き 云いたいことを云う

雨降って、かたまらないもの

ロンドンのウェストミンスター宮殿(国会議事堂)付近で、EU離脱の撤回を求めるデモが行われた。主催者発表で五七万人というかなり大規模なデモは、もちろんそれがそのままイギリス国民の民意を代表しているわけではないが、いまだにこの問題が国を二分した…

十月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

十八世中村勘三郎の、もう七回忌になるのかという追善興行である。当月夜の部は勘九郎・七之助を中心に、個人とゆかりのある仁左衛門・玉三郎らが顔をそろえる。 『吉野山』は勘九郎の忠信に玉三郎の静御前。 玉三郎は花道の出からすでに踊ることをひたすら…

通し狂言『平家女護島』(国立劇場・大劇場)

いつもは二段目の切「鬼界島 の段」が『俊寛』として上演されるのみの『平家女護島』。今回は通し狂言と銘打ってはいるがもちろん全五段の通しではなく、いつもの「鬼界島」の場面の前後に「六波羅清盛館」と「敷名浦」をつけくわえたもので、平成七年におな…

シス・カンパニー『出口なし』(新国立劇場・小劇場)

新作だけではなく、すでに古典となった戯曲を豪華なキャストでていねいに上演することで定評のあるシス・カンパニーの公演。ジャン=ポール・サルトルの不条理演劇の代表作『出口なし』を小川絵梨子の演出で観る。 ガルサン、イエネス、エステルというなにも…

小田尚稔の演劇『聖地巡礼』(RAFT)

小田尚稔の作・演出『聖地巡礼』を観る。出演は助川紗和子、橋本和加子のふたりのみ、休憩なし90分の舞台である。 東京に住む織田という女性が、学生時代の友人の結婚式に招かれ八戸へ短い旅行をする。そのおりに恐山へ立ち寄る織田の体験を追いながら、そこ…

東京二期会『三部作』(新国立劇場・オペラパレス)

プッチーニ『三部作』(『外套』『修道女アンジェリカ』『ジャンニ・スキッキ』) 【指揮】ベルトラン・ド・ビリー 【演出】ダミアーノ・ミキエレット 【出演】今井俊輔、文屋小百合、芹沢佳通、小林紗季子、北川辰彦、新津耕平、船橋千尋、与田朝子、石井藍…

九月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

昼の部の幕開きは『金閣寺』から。 脳梗塞からのリハビリ中の中村福助、五年ぶりの出演となる舞台である。自身の歌右衛門襲名が発表された直後におきた悲劇。こうして歌舞伎座でふたたびその姿を目にするだけで感慨深い。役は動きも科白もわずかな慶寿院だが…

『翁』『井筒』『乱』(国立能楽堂)

昭和五八年九月に開場した国立能楽堂開場が、三十五周年を記念して催す公演のひとつ。能楽界を代表する重鎮たちの競演や、普段は見られない特殊演出が見ものである。 『翁』は、珍しい「松竹風流」の小書での上演。金剛永謹の翁は堂々たる体躯、朗々とした声…

同じ顔の男たち〜『寝ても覚めても』を観て

わたしたちは、目の前の友人を指して「あなたはタレントの誰々に似ている」などという話をすることがある。もちろん本人や周囲の賛同を得られることもあるが、云われた本人はもちろん、周りの誰もそうだと思ってくれないような場合も珍しくない。 ある人物と…

九月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

吉右衛門の十八番ともいえる『俊寛』。初代吉右衛門のあたり芸だったこともあり、当代も頻繁に取り上げるのでまたかの感はあるが、これがまた傑作である。 『俊寛』は義太夫狂言のなかでもいささか特殊な演目である。長い間の貧しい島暮らしゆえに体力の衰え…