黒井緑朗のひとりがたり

きままに書きたいことを書き 云いたいことを云う

初春歌舞伎夜の部(新橋演舞場)

新橋演舞場は正月恒例の海老蔵を座頭にすえた歌舞伎公演。初日夜の部を観る。 『牡丹花十一代』は海老蔵一家はじめ一座総出で華やかなお年賀。 『俊寛』は初役で海老蔵が演じる。この場での俊寛は三十代後半という設定だが、流罪の暮らしが長かったからとは…

寿初春大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

一月は東京だけでも四ヶ所、ほかの都市でも興行があるために、初芝居とは名ばかりのさびしい座組になることも少なくないが、二〇一九年正月の歌舞伎座は松本白鸚と中村吉右衛門のけっして共演しない二人を軸にした座組。まずは夜の部初日を観る。 『絵本太功…

魂が救われるとき~『A GHOST STORY』を観て

二〇一八年の終わりを、すてきな映画でしめくくる幸せ。デヴィッド・ロウリー監督の『A GHOST STORY』を観た。 大事なひとを失った妻と、その妻の眼には見えない夫の霊との映画と云えばジェリー・ザッカー監督の『ゴースト』(1990年)が思い出されるが、こ…

十二月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

夜の部はなんといっても坂東玉三郎から若手女形へ『阿古屋』が受け継がれるということが注目の舞台。二十五日興業のうち、十四日間は玉三郎自身が、残りは中村梅枝と中村児太郎が交代で阿古屋をつとめるという変則で、いわば公開の場での芸の継承である。 そ…

オフィスマウンテンvol.5 『能を捨てよ体で生きる』

オフィスマウンテンの新作『能を捨てよ体で生きる』を観る。 タイトルにある「能」という字は、能力というコトバがあるように、なにがしかの事態を可能にする意識的な「チカラ」やそのはたらきのことを表し、その「チカラ」をはたらかせることを「能動的」と…

十二月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

師走の歌舞伎座。特に昼の部は当月唯一の幹部役者ともいえる玉三郎も不在なためいささかさびしい座組だが、若手の奮闘により充実したものになった。 『幸助餅』は云うまでもなく松竹新喜劇を代表する名作人情劇。15年前に現・鴈治郎が歌舞伎として上演、以来…

十一月顔見世歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

夜の部に続いて昼の部。 『お江戸みやげ』は短いがうまくまとまった佳品で、 昭和では十七代目勘三郎と守田勘弥の、 平成では七代目芝翫と富十郎の名コンビによって演じられてきた。 七年前には十代目三津五郎と鴈治郎によってひさびさに上演されたが、その…

十一月顔見世歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

中日もとっくに過ぎて、ようやく観ることのできた歌舞伎座。毎年のことながら顔見世とは名ばかりで、菊五郎と吉右衛門それぞれの一座に、猿之助が加わるという座組。 『楼門五三桐』は吉右衛門の石川五右衛門。今月は出番が少ないためか「絶景かな、絶景かな…

雨降って、かたまらないもの

ロンドンのウェストミンスター宮殿(国会議事堂)付近で、EU離脱の撤回を求めるデモが行われた。主催者発表で五七万人というかなり大規模なデモは、もちろんそれがそのままイギリス国民の民意を代表しているわけではないが、いまだにこの問題が国を二分した…

十月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

十八世中村勘三郎の、もう七回忌になるのかという追善興行である。当月夜の部は勘九郎・七之助を中心に、個人とゆかりのある仁左衛門・玉三郎らが顔をそろえる。 『吉野山』は勘九郎の忠信に玉三郎の静御前。 玉三郎は花道の出からすでに踊ることをひたすら…