こんにちの丸本歌舞伎におけるツートップともいうべき、中村吉右衛門と片岡仁左衛門。古典作品を現代のドラマとして更新することにかけるこのふたりが、それぞれの特色をみせ挑む『石切梶原』と『封印切』が期待に違わず見ものである。 『石切梶原』はこのと…
加藤健一事務所の主催公演。ロナルド・ハーウッドが一九九五年に発表した、ヴィルヘルム・フルトヴェングラーの非ナチ化裁判にまつわる戯曲。おなじハーウッドの『ドレッサー』ほど有名でも完成度が高いわけでもないが、いまの時代に上演する意義のある作品…
「美術手帖×VOLVO ART PROJECT」として、ボルボスタジオ青山で小田尚稔・作、演出の『善悪のむこうがわ』が初演された。その五月十五日の初日を観る。 哲学の古典的著作からモチーフを得て作品をつくりあげてきた小田尚稔が今回選んだのは、キリスト教的な道…
團菊祭夜の部。大看板の二人は孫の初舞台につきあうのみで、ほぼ若手中心の公演である。なかでも、昼の部で海老蔵が『勧進帳』を出したのにたいし、夜は菊之助が『娘道成寺』で新境地を見せる。 令和のはじまりを祝って松緑と時蔵が舞う『鶴寿千歳』につづい…
令和に元号がかわってはじめての歌舞伎座。五月の歌舞伎座はいわゆる「團菊祭」と銘打たれた公演だが、この数年は團菊にとっての重要なレパートリーを次世代の團菊に受け継いでいくさまを目のあたりにすることができる。昼の部は、若手中心の『対面』、次世…
平成最後のゴールデンウィークのはじまりに、ニコニコ超会議2019で超歌舞伎を観る。三年前に上演されたものに大幅に手を入れての再演とのことである。松岡亮の脚本、藤間勘十郎の演出。 古典歌舞伎『義経千本桜』の世界と、初音ミクのヒット曲「千本桜」から…
八十八歳の巨匠ジャン・リュック・ゴダールの新作を劇場で観られるという期待と、 そのほとんどが過去の映像、音楽、文芸などの作品からのおびただしい引用のコラージュにより作られているらしいということへの不安と、そのいずれもをいだいて『イメージの本…
歌舞伎の公演が定期的に行われる劇場は全国各地にあるが、歌舞伎役者にとって歌舞伎座という場所はやはり特別な本拠地だと感じているようだ。それはもちろん歌舞伎を観るファンにとってもおなじだろう。現在の歌舞伎座は二〇一三年に建て替えられ再開場した…
ふたつのオペラを組み合わせた、いわゆる「ダブルビル」シリーズの第一弾として、ツェムリンスキー作曲『フィレンツェの悲劇』とプッチーニ作曲『ジャンニ・スキッキ』が取り上げられた。演出は粟国淳、指揮は沼尻竜典。 二十世紀初頭のほぼ同時期に作曲され…
平成最後の歌舞伎座、夜の部。 『実盛物語』は十数年ぶりという仁左衛門の実盛。七十五歳になっての実盛は最年長記録ではないかと自身が語っているが、その颯爽とした明るさは衰えるどころかいっそう増している。きっぱりと派手に身体が動きながら、それでい…