若手の研鑽の場という当初の思惑をはるかにこえて、近年ではチケットもなかなか入手しづらくなった新春の浅草公会堂。 本来であれば「まだ早かろう」という役々を、勉強会としてではなく、ひと月のあいだ商業ベースに乗って演じられるというのは、若い役者に…
新春の歌舞伎座昼の部。 はなやかな『醍醐の花見』の一幕からはじまる。 豊臣秀吉は中村梅玉。秀吉らしい鷹揚かつもっさりとした雰囲気をよく出している。魁春演じる北政所と連れ舞いになっても、その性根のまま踊るのがよく、これぞ役者の踊りというべき余…
二〇二〇年の幕開けとなる一月の歌舞伎座の夜の部を観る。このところの新春の歌舞伎座は、わが子の首を切り落として身代わりにするなどという正月らしからぬ演目が並ぶことが続いたが、今年ははなやかな演目がおおい。 『義経腰越状』は松本白鸚の五斗兵衛。…
高麗屋親子による十二月歌舞伎公演。 『盛綱陣屋』の佐々木盛綱を白鸚が演じるのは二十八年ぶりとのこと。ほかにも初役で演じる役者が多数のこの陣屋が、なんとも見ごたえある一幕であった。 白鸚ははじめの出から見た目が素晴らしく期待させ、和田兵衛との…
十二月の歌舞伎座昼の部は、昨年につづいて玉三郎によるさながら後進育成公演。まさに一年前も、おなじ『阿古屋』を玉三郎と梅枝、児太郎が交代で、重忠や岩永を彦三郎と松緑が演じた。市川中車による定番の新歌舞伎、ふたりの若手女形や玉三郎による舞踊小…
師走の歌舞伎座は、大波乱。 『神霊矢口渡』は主要な役がほぼ初役ばかりという新鮮な顔ぶれだが、これがたいへん充実した見応えあるものであった。 お舟を演じる梅枝は、現代的なリアリティとその持って生まれた古風さを見事に両立させて好演。『鮨屋』のお…
綾門優季の書いた『景観の邪魔』の再演。橋本清の演出で、『景観の邪魔Aプログラム』と『景観の邪魔Bプログラム』のふたつのヴァージョンを併演するという趣向である。 この作品の台本は、会場であらかじめ観客に配布された。長短さまざまな二十四のシーン(…
国立劇場の十一月公演は『孤高勇士嬢景清』である。なぜこのような恥ずかしい外題になってしまったのかはわからないが、『嬢景清八嶋日記』と『大仏殿万代石礎』をもとにあらたにつくられた場を加え、「日向嶋」へつなげた台本による。「日向嶋」の場は松貫…
札幌で活動する劇団「演劇家族スイートホーム」は昨年度のTGR新人賞を受賞した団体。第四回公演『わだちを踏むように』(作/演出・高橋正子)の初日を観る。 ひとことで言えば、なかなかの傑作である。 そこでえがかれるのは家族のものがたりだが、家族を家…
歌舞伎座の昼の部は都合により『髪結新三』のみを観る。これが、なかなか見応えあって面白い。 菊五郎が新三を演じるのは久しぶり。この数年のあいだに菊五郎劇団の新三を受け継いでいくであろう松緑や菊之助も演じたが、やはり当代菊五郎のそれは別格である…