黒井緑朗のひとりがたり

きままに書きたいことを書き 云いたいことを云う

図夢歌舞伎『忠臣蔵』(Streaming+)

図夢歌舞伎と銘打って、松本幸四郎を中心に、リモートでの歌舞伎上演をさぐる取り組み。五回にわけて『仮名手本忠臣蔵』を上演して配信しようという企画、今日はその初回である。ゲストに中村壱太郎と市川猿弥が参加。 口上人形(声・猿弥)の登場となり、今…

岡田利規「『未練の幽霊と怪物』の上演の幽霊」

本来であればこの6月にKAAT神奈川芸術劇場で上演される予定であった『未練の幽霊と怪物』の初演は、例にもれず新型コロナウイルスの影響により公演中止になった。それにともない上演される機会を失ったはずのこの新作だが、このたび2日間だけの限定でYouTube…

「主人が」は「わたしの夫が」に置きかえられるのか

某タレントの恥ずかしいことこのうえない破廉恥な不倫騒動について、その妻である女優が「主人の無自覚な行動により、……」と謝罪文を発表した。この「うちの主人」という表現にたいして、ちいさな炎上とも言うべき反応があった。いまの時代にあって「主人」…

眼に見えない他者とむきあうために

二〇一九年の十一月にその発生が発見され、二〇二〇年三月の段階でも世界的に流行の兆しを見せている新型コロナウイルスがわたしたちの社会にもたらした影響は、おおくのひとにとって、はじめの想像をはるかにこえたものになった。 コンサートや演劇、スポー…

二月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

夜の部も十三世片岡仁左衛門の追善演目がいくつもならぶ。だが、小品というしかない演目ばかりで、腰を据えて観られる歌舞伎らしい演目は『文七元結』だけという、なんともさみしい番組である。 『八陣守護城』は忠義の臣・加藤清正=佐藤正清のおおきさを見…

二月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

歌舞伎座の昼の部は『菅原伝授手習鑑』の半通し。菅原道真の身にふりかかる悲劇をえがいたこの傑作義太夫狂言の前半部である。十三世片岡仁左衛門の二十七回忌追善として、当代の仁左衛門が菅丞相を五年ぶりに演じる。 「加茂堤」は全員が初役という新鮮な一…

新春浅草歌舞伎夜の部(浅草公会堂)

若手の研鑽の場という当初の思惑をはるかにこえて、近年ではチケットもなかなか入手しづらくなった新春の浅草公会堂。 本来であれば「まだ早かろう」という役々を、勉強会としてではなく、ひと月のあいだ商業ベースに乗って演じられるというのは、若い役者に…

寿初春大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

新春の歌舞伎座昼の部。 はなやかな『醍醐の花見』の一幕からはじまる。 豊臣秀吉は中村梅玉。秀吉らしい鷹揚かつもっさりとした雰囲気をよく出している。魁春演じる北政所と連れ舞いになっても、その性根のまま踊るのがよく、これぞ役者の踊りというべき余…

寿初春大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

二〇二〇年の幕開けとなる一月の歌舞伎座の夜の部を観る。このところの新春の歌舞伎座は、わが子の首を切り落として身代わりにするなどという正月らしからぬ演目が並ぶことが続いたが、今年ははなやかな演目がおおい。 『義経腰越状』は松本白鸚の五斗兵衛。…

『盛綱陣屋』『蝙蝠の安さん』(国立劇場)

高麗屋親子による十二月歌舞伎公演。 『盛綱陣屋』の佐々木盛綱を白鸚が演じるのは二十八年ぶりとのこと。ほかにも初役で演じる役者が多数のこの陣屋が、なんとも見ごたえある一幕であった。 白鸚ははじめの出から見た目が素晴らしく期待させ、和田兵衛との…