黒井緑朗のひとりがたり

きままに書きたいことを書き 云いたいことを云う

シス・カンパニー『出口なし』(新国立劇場・小劇場)

新作だけではなく、すでに古典となった戯曲を豪華なキャストでていねいに上演することで定評のあるシス・カンパニーの公演。ジャン=ポール・サルトルの不条理演劇の代表作『出口なし』を小川絵梨子の演出で観る。 ガルサン、イエネス、エステルというなにも…

小田尚稔の演劇『聖地巡礼』(RAFT)

小田尚稔の作・演出『聖地巡礼』を観る。出演は助川紗和子、橋本和加子のふたりのみ、休憩なし90分の舞台である。 東京に住む織田という女性が、学生時代の友人の結婚式に招かれ八戸へ短い旅行をする。そのおりに恐山へ立ち寄る織田の体験を追いながら、そこ…

東京二期会『三部作』(新国立劇場・オペラパレス)

プッチーニ『三部作』(『外套』『修道女アンジェリカ』『ジャンニ・スキッキ』) 【指揮】ベルトラン・ド・ビリー 【演出】ダミアーノ・ミキエレット 【出演】今井俊輔、文屋小百合、芹沢佳通、小林紗季子、北川辰彦、新津耕平、船橋千尋、与田朝子、石井藍…

九月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

昼の部の幕開きは『金閣寺』から。 脳梗塞からのリハビリ中の中村福助、五年ぶりの出演となる舞台である。自身の歌右衛門襲名が発表された直後におきた悲劇。こうして歌舞伎座でふたたびその姿を目にするだけで感慨深い。役は動きも科白もわずかな慶寿院だが…

『翁』『井筒』『乱』(国立能楽堂)

昭和五八年九月に開場した国立能楽堂開場が、三十五周年を記念して催す公演のひとつ。能楽界を代表する重鎮たちの競演や、普段は見られない特殊演出が見ものである。 『翁』は、珍しい「松竹風流」の小書での上演。金剛永謹の翁は堂々たる体躯、朗々とした声…

同じ顔の男たち〜『寝ても覚めても』を観て

わたしたちは、目の前の友人を指して「あなたはタレントの誰々に似ている」などという話をすることがある。もちろん本人や周囲の賛同を得られることもあるが、云われた本人はもちろん、周りの誰もそうだと思ってくれないような場合も珍しくない。 ある人物と…

九月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

吉右衛門の十八番ともいえる『俊寛』。初代吉右衛門のあたり芸だったこともあり、当代も頻繁に取り上げるのでまたかの感はあるが、これがまた傑作である。 『俊寛』は義太夫狂言のなかでもいささか特殊な演目である。長い間の貧しい島暮らしゆえに体力の衰え…

川の流れのように〜『手をなくした少女』を観て

話題になっている『大人のためのグリム童話〜手をなくした少女』を観る。 昔から知られているグリム童話『手なし娘』を現代に蘇らせた、セバスチャン・ローデンバックのアニメーション映画だ。監督自身がひとりですべての作画を手がけたというから驚きだ。ク…

八月納涼歌舞伎第三部(歌舞伎座)

『盟三五大切』の久々に歌舞伎座での上演である。幸四郎をはじめとした若手中心の一座だが、間違いなく今月の白眉であり、また近年上演された南北作品のうちでも特筆すべき舞台であった。 四世鶴屋南北は、少し遅れて活躍した河竹黙阿弥とともに江戸の「悪」…

八月納涼歌舞伎第一部(歌舞伎座)

三部制の八月歌舞伎座。まずは第一部を観る。 『花魁草』は昭和56年に七世梅幸にあてて北条秀司が書き下ろした新歌舞伎。新派でも一度取り上げられたのち歌舞伎としては7年前に新橋演舞場で久しぶりに再演され、今月が再々演である。 江戸をおそった地震と火…

サマータイムとは誰の「時間」なのか

「自民党は2020年東京五輪・パラリンピックの猛暑対策として、時計の針を早めるサマータイム(夏時間)導入の検討に入る。安倍晋三首相(党総裁)の指示を受けたもので、早ければ秋に予定される臨時国会に関連法案を提出し、19年の試験実施を目指す。ただ、…

アンドロイドオペラ ”Scary Beauty"(日本科学未来館)

2018年7月22日 (日)20:30日本科学未来館1Fシンボルゾーン 【出演】コンセプト、作曲、ディレクション、ピアノ:渋谷慶一郎ヴォーカル、指揮:オルタ2演奏:国立音楽大学学生・卒業生有志オーケストラ ロボット学者石黒浩の作ったアンドロイド「オルタ2」に…

七月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

市川海老蔵を中心とした座組が定着するようになった7月の歌舞伎座だが、長らくそこを指定席としていた三代目市川猿之助(現・猿翁)時代の伝統を引き継ぐかのように、海老蔵もまた創意ある演出による復活狂言や、エンターテインメント性の強い舞台を上演し続…

東京二期会『魔弾の射手』(東京文化会館)

ウェーバー作曲 『魔弾の射手』(全三幕) 【指揮】アレホ・ペレス 【演出】ペーター・コンヴィチュニー 【出演】藪内俊弥、伊藤 純、北村さおり、熊田アルベルト彩乃、加藤宏隆、小貫岩夫、小鉄和広、杉浦隆大、大和悠河 【合唱】二期会合唱団 【管弦楽】読…

ダフ屋行為はそもそも「悪」なのか

「コンサートなどのチケットの高額転売問題で、超党派のチケット高額転売問題対策議連が28日、インターネット上も含めた「ダフ屋行為」を禁止する法案をまとめた。来春にもチケット販売が始まる2020年東京五輪・パラリンピックを念頭に、今国会での成…

弥勒菩薩がやってくる日

ひさびさに京都を訪れた。 広隆寺霊宝殿にある弥勒菩薩半跏思惟像。自分は仏教徒ではないが、この仏像に惹かれ続け、いままでも京都に足を運んだ際には、時間があれば足を運び眺めてきた。 いくたび眺めても飽きることはない。かすかに前かがみになりながら…

「季節をめぐる歌たち」 木下正道 作曲作品個展(東京オペラシティ近江楽堂)

2018年6月13日 (水)19:00東京オペラシティ3F 近江楽堂 【曲目】☆夏は夜 IV (清少納言) for Soprano, Clarinet & Guitar ☆3つの秋の歌 IV (八木重吉) for Soprano, Flute & Guitar☆灰、灰たち.. 灰...V for Guitar & Percussion☆冬のスケッチ (宮沢賢治) for …

無責任な大衆とアーティストのあいだに

RADWIMPSの新曲「HINOMARU」の歌詞が話題になっている件について6月11日、ボーカルで作詞を担当した野田洋次郎さんが自身のTwitterでコメントを発表した。「戦時中のことと結びつけて考えられる可能性があるかと腑に落ちる部分もありました。傷ついた人達、…

六月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

夜の部は初夏らしい狂言二本立て。 『夏祭浪花鑑』は歌舞伎座建て替え中の2011年の6月以来、ちょうど7年ぶりとなる吉右衛門の団七。 結論から云えばいささか低調な『夏祭』であった。 まず、初日からまだ数日とはいえ、科白が怪しい役者が多すぎること。また…

六月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

『妹背山婦女庭訓』から「御殿」の場。 前半の主役である鱶七は松緑。拡がりに欠く発声や歌舞伎役者としては長すぎる四肢や小さな頭というハンディがありながら、近年それを乗り越え少しづつ成果を残してきた松緑のこと、期待を込めて観る。 声についてはよ…

新国立劇場『フィデリオ』(新国立劇場オペラパレス)

ベートーヴェン作曲 『フィデリオ』(全二幕) 【指揮】飯守泰次郎 【演出】カタリーナ・ヴァーグナー 【出演】黒田博/ミヒャエル・クプファー=ラデツキー/ステファン・グールド/リカルダ・メルベート/妻屋秀和/石橋栄実/鈴木准/片寄純也/大沼徹 【…

「正しさ」を演じるコトバたち

「麻生氏『北の核の感覚、戦略外交では正しい』」 麻生副総理兼財務相は30日、東京都内で開かれた自民党議員のパーティーであいさつし、北朝鮮が進めてきた核開発に関連し、「『俺のところは核で武装する以外に手がない』と思う北朝鮮の感覚の方が、少なく…

五月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

尾上菊五郎家にとって、『白波五人男』の弁天小僧菊之助は紛れもなく五代目以降受け継がれてきた「家の芸」である。 菊五郎が数年前に前回この役を手がけたとき、「浜松屋」「稲瀬川勢揃」だけでなく「立腹」「山門」までを半通しで出し、それに合わせて「こ…

裏切りもののコトバとともに

コトバについてはじめて真剣に考えたのは、いつのことだろうか。 子供のころは、無理やりおとなの仲間入りをしたような気になって、背伸びをしてもっともらしいことを云っていた。話をすることは好きだった。感じたままに話し、誰も考えないようなことを思い…