黒井緑朗のひとりがたり

きままに書きたいことを書き 云いたいことを云う

歌舞伎/能

新春浅草歌舞伎夜の部(浅草公会堂)

若手の研鑽の場という当初の思惑をはるかにこえて、近年ではチケットもなかなか入手しづらくなった新春の浅草公会堂。 本来であれば「まだ早かろう」という役々を、勉強会としてではなく、ひと月のあいだ商業ベースに乗って演じられるというのは、若い役者に…

寿初春大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

新春の歌舞伎座昼の部。 はなやかな『醍醐の花見』の一幕からはじまる。 豊臣秀吉は中村梅玉。秀吉らしい鷹揚かつもっさりとした雰囲気をよく出している。魁春演じる北政所と連れ舞いになっても、その性根のまま踊るのがよく、これぞ役者の踊りというべき余…

寿初春大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

二〇二〇年の幕開けとなる一月の歌舞伎座の夜の部を観る。このところの新春の歌舞伎座は、わが子の首を切り落として身代わりにするなどという正月らしからぬ演目が並ぶことが続いたが、今年ははなやかな演目がおおい。 『義経腰越状』は松本白鸚の五斗兵衛。…

十二月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

師走の歌舞伎座は、大波乱。 『神霊矢口渡』は主要な役がほぼ初役ばかりという新鮮な顔ぶれだが、これがたいへん充実した見応えあるものであった。 お舟を演じる梅枝は、現代的なリアリティとその持って生まれた古風さを見事に両立させて好演。『鮨屋』のお…

『孤高勇士嬢景清』(国立劇場)

国立劇場の十一月公演は『孤高勇士嬢景清』である。なぜこのような恥ずかしい外題になってしまったのかはわからないが、『嬢景清八嶋日記』と『大仏殿万代石礎』をもとにあらたにつくられた場を加え、「日向嶋」へつなげた台本による。「日向嶋」の場は松貫…

吉例顔見世大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

中村梅玉の部屋子であった中村梅丸が、梅玉の養子となり、あらたに初代中村莟玉を名乗ることが見どころの夜の部。 まずはその莟玉の披露狂言である『菊畑』から。 梅玉の智恵内はかならずしも本来のニンではないだろうが、その持ち味であるなんとも言えない…

芸術祭十月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

歌舞伎座夜の部はまず『三人吉三巴白波』が通し上演。菊五郎劇団の若手を中心とした配役で、主役のひとりであるお嬢吉三は尾上松也と中村梅枝のダブルキャスト。二日目のこの日は梅枝が演じる。 有名な「大川端庚申塚の場」は毎年のように上演されるが、この…

国立能楽堂『卒都婆小町』(国立能楽堂)

梅若実のシテで『卒都婆小町』を観る。 いわゆる老女物といわれるもののなかでも『卒都婆小町』は哲学的な重厚さのみならず、音楽的、演劇的な変化に富んだドラマティックな一曲。僧をも感服させるほどの仏教的教理につうじていながら、なおも深草少将の霊に…

仁左衛門の『勧進帳』(歌舞伎座)

夜の部の『勧進帳』は日替わりでのダブルキャスト。幸四郎の弁慶についてはさきに書いたが、たいする仁左衛門の弁慶が期待にたがわずきわめて素晴らしいものであった。 ※幸四郎の弁慶についてはこちらで書いたのでお読みください。 秀山祭九月大歌舞伎夜の部…

秀山祭九月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

秀山祭昼の部。主宰の吉右衛門が『湯殿の長兵衛』を幸四郎、松緑という次世代へ継承し、みずからは万全の布陣でのぞんだ『沼津』で芸の円熟を見せる。 『幡随長兵衛』は幸四郎の長兵衛で。序幕の村山座の場から、表向きは腰が低くとも、有無を言わさず場を支…

秀山祭九月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

ここ数年は、中村吉右衛門が後継者にその芸を残す場として機能している、九月恒例の秀山祭の夜の部。今年は仁左衛門も加わった重厚な座組で、ひさびさに古典作品ばかりがならんだ歌舞伎座を堪能できる。 『菅原伝授手習鑑』の「寺子屋」はなんども演じてきた…

八月納涼歌舞伎第一部(歌舞伎座)

八月恒例の納涼歌舞伎は、例年の通りの三部制。そのなかで唯一古典を出すのが第一部。 『伽羅先代萩』は「御殿」から。主役の政岡に七之助が初役で挑戦。いつもながら言語明晰、意味明瞭であることがよく、ひとつとしてそのセリフが疎かにされることない。「…

七月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

歌舞伎座の昼の部は「歌舞伎十八番」からは『外郎売』、「新歌舞伎十八番」からは『高時』と『素襖落』と、成田屋ゆかりの演目がならぶ。 『高時』は市川右團次の北条高時で。 いわゆる活歴物のひとつとして河竹黙阿弥によってつくられた本作だが、皮肉なこ…

六月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

六月歌舞伎座夜の部は、三谷幸喜作・演出による新作歌舞伎。みなもと太郎のマンガ『風雲児たち』を原作に、大黒屋光太夫らのロシア行きをめぐるくだりを歌舞伎として上演するものである。 開幕五分前になると幕が開き、いちめんに海原がひろがる舞台があらわ…

六月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

こんにちの丸本歌舞伎におけるツートップともいうべき、中村吉右衛門と片岡仁左衛門。古典作品を現代のドラマとして更新することにかけるこのふたりが、それぞれの特色をみせ挑む『石切梶原』と『封印切』が期待に違わず見ものである。 『石切梶原』はこのと…

團菊祭五月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

團菊祭夜の部。大看板の二人は孫の初舞台につきあうのみで、ほぼ若手中心の公演である。なかでも、昼の部で海老蔵が『勧進帳』を出したのにたいし、夜は菊之助が『娘道成寺』で新境地を見せる。 令和のはじまりを祝って松緑と時蔵が舞う『鶴寿千歳』につづい…

團菊祭五月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

令和に元号がかわってはじめての歌舞伎座。五月の歌舞伎座はいわゆる「團菊祭」と銘打たれた公演だが、この数年は團菊にとっての重要なレパートリーを次世代の團菊に受け継いでいくさまを目のあたりにすることができる。昼の部は、若手中心の『対面』、次世…

超歌舞伎『今昔饗宴千本桜』(幕張メッセ)

平成最後のゴールデンウィークのはじまりに、ニコニコ超会議2019で超歌舞伎を観る。三年前に上演されたものに大幅に手を入れての再演とのことである。松岡亮の脚本、藤間勘十郎の演出。 古典歌舞伎『義経千本桜』の世界と、初音ミクのヒット曲「千本桜」から…

舞台の間口について~歌舞伎の場合~

歌舞伎の公演が定期的に行われる劇場は全国各地にあるが、歌舞伎役者にとって歌舞伎座という場所はやはり特別な本拠地だと感じているようだ。それはもちろん歌舞伎を観るファンにとってもおなじだろう。現在の歌舞伎座は二〇一三年に建て替えられ再開場した…

四月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

平成最後の歌舞伎座、夜の部。 『実盛物語』は十数年ぶりという仁左衛門の実盛。七十五歳になっての実盛は最年長記録ではないかと自身が語っているが、その颯爽とした明るさは衰えるどころかいっそう増している。きっぱりと派手に身体が動きながら、それでい…

四月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

平成最後となる歌舞伎座は、ベテラン幹部と次世代それぞれの見せ場のある狂言立て。昼の部は出番はわずかではあるが存在感を示す藤十郎、菊五郎、吉右衛門らの芸と、次世代の堅実な実力派による古典。 『平成代名残絵巻』は新作の絵巻物ということで、内容は…

三月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

『盛綱陣屋』は仁左衛門の盛綱。なんども演じたあたり役である。その芝居のドラマを現代の観客にもわかりやすく、しかしあくまで型のなかに求めるという仁左衛門らしさが生かされた傑出した舞台。 和田兵衛とのやりとりは表面上はぐっとおさえてはいるが、言…

国立劇場三月歌舞伎公演(国立劇場・小劇場)

三月の国立劇場はいつもとちがって小劇場での公演。そして、上置きの中村又五郎以外はいずれの演目とも初役ぞろいという新鮮な舞台。 『御浜御殿』は真山青果の代表作『元禄忠臣蔵』のなかでもきわめて上演頻度が高いもの。近年では片岡仁左衛門があたり役と…

三月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

三月歌舞伎座の昼の部は、あまり上演されないめずらしい演目や場がならぶ。 『女鳴神』はいわずとしれた歌舞伎十八番『鳴神』の女版。初代團十郎が『鳴神』を初演した元禄九年、おなじ年にすでに上演されたもので、今回は二十七年ぶりの上演。神通力で雨が降…

二月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

二月の夜の部は『熊谷陣屋』から。 近年では毎年のように白鷗か吉右衛門のいずれかが演じているように感じるが、今月は吉右衛門の熊谷で。花道の出はあえて気持ちを出さず、数珠をしまうのもきわめて最小限の動き。それがかえって悲痛な空気を醸し出している…

二月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

今月は初世尾上辰之助(三世尾上松緑)の三十三回忌として、ゆかりのある狂言だて。故・辰之助の盟友であった菊五郎や子息の松緑がそのあたり役(「鮓屋」は辰之助は若い頃にやっただけなので、祖父二世松緑のあたり役か)を演じる。 『義経千本桜』から「鮓…

海老蔵の市川團十郎襲名が決定

十一代目市川海老蔵が、来年(二〇二〇年)の五月に市川團十郎の大名跡を十三代目として襲名することが発表された。成田屋の嫡男としては、いずれはそうなるであろうことは明らかであったにせよ、正式に発表され喜ばしいことこのうえない。 歌舞伎の世界に存…

寿初春大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

初芝居の昼の部は、いずれも明るく華やかな演目が並ぶ。 『三番叟』に続いて『吉例寿曽我』の外題で出されるのはみなれた「対面」ではなく、工藤祐経の妻梛の葉に曽我箱王と兄の一万が対面するという珍しい一幕。 梛の葉を演じるのは九月に長期療養から復帰…

梅若会定式能『船弁慶』(梅若能楽会館)

新年最初の観能は一月五日梅若会定式能での『船弁慶』(小書「重キ前後之替」)。 シテは山中迓晶。もともと細部にいたるまで丁寧な美意識が貫徹するこのひとらしい、美しさに満ちた芸を堪能した。 前シテの静は橋懸りの出こそかたく感じられたが、「そのと…

初春歌舞伎夜の部(新橋演舞場)

新橋演舞場は正月恒例の海老蔵を座頭にすえた歌舞伎公演。初日夜の部を観る。 『牡丹花十一代』は海老蔵一家はじめ一座総出で華やかなお年賀。 『俊寛』は初役で海老蔵が演じる。この場での俊寛は三十代後半という設定だが、流罪の暮らしが長かったからとは…