黒井緑朗のひとりがたり

きままに書きたいことを書き 云いたいことを云う

『異邦人の庭』(演劇専用小劇場 BLOCH)

昨年名古屋で初演された刈馬カオスの『異邦人の庭』を、札幌劇場祭TGR2020参加作品としてOrgofA(オルオブエー)が上演。最終日11月29日の昼公演を観る。傑作の戯曲と、それにふさわしい名演であった。 上演時間60分のこの作品は、ある死刑囚と彼女を取材す…

小田尚稔『罪と愛』(アゴラ劇場)

小田尚稔の演劇を前回観たのは、新型コロナウィルスの影響でつぎつぎと舞台公演が中止になっていた3月。8か月を経て、あのころとおなじように感染者が急増しつつあるなかで観ることになった今回の舞台は、タイトルからわかるようにドストエフスキーの『罪と…

十一月歌舞伎公演第一部『俊寛』(国立劇場)

国立劇場第一部は吉右衛門の『俊寛』が「清盛館」つきで上演。 いつもは「鬼界ヶ島」の場のみの上演だが、俊寛が流刑の島にひとりで残る決心をするきっかけとなる妻・東屋の悲劇を「清盛館」で見せておくことで、いっそうドラマの構造が明確になる。のちに瀬…

十一月歌舞伎公演第ニ部『毛谷村』(国立劇場)

今月も国立劇場は二部制で、それぞれ現代を代表する名優が本格な舞台を見せている。第二部は片岡仁左衛門が六助を演じる『毛谷村』である。 いつも上演される「六助住家」の前に、今月は「杉坂墓所」の場が出る。ここは話の筋をとおすだけのなんということも…

十月大歌舞伎第二部(歌舞伎座)

四部制で再開して三ヶ月目の歌舞伎座。その第二部を観る。 『双蝶々曲輪日記』のうちでも屈指の名場面である「引窓」が先月上演されたのにつづき、今月は松本白鸚、松本幸四郎で「角力場」が出る。演劇的なドラマというよりも相撲取りの意地と格を見せるこの…

九月大歌舞伎第三部(歌舞伎座)

再開して二月目となる歌舞伎座。今月も一演目づつの四部構成である。 ここのところ定着した「秀山祭」の看板がないのは残念ではあるが、吉右衛門一座を中心とした見ごたえのある演目がならぶ。そのなかから第三部を観る。 『双蝶々曲輪日記』の「引窓」は、…

八月花形歌舞伎(歌舞伎座)

今年の二月以来、ひさびさに開場した歌舞伎座。コロナウィルスへの感染対策として、興行形態をおおきく変更しての再スタートとなった。観客の鑑賞や入場にかんしてのみならず、楽屋での徹底した対策など、これでもかと考えられているようだ。 筋書や食事の販…

川島素晴 plays... vol.2 “無音” (旧東京音楽学校奏楽堂)

梅雨も明けた真夏日、緑にかこまれた上野の旧奏楽堂。作曲家・川島素晴プロデュースのいっぷうかわったコンサートが開催された。ジョン・ケージの代名詞ともなった(それはそれで本人は不本意だっただろうが)名曲「4'33"」をはじめとして、川島自身の新作も…

図夢歌舞伎『忠臣蔵』(Streaming+)

図夢歌舞伎と銘打って、松本幸四郎を中心に、リモートでの歌舞伎上演をさぐる取り組み。五回にわけて『仮名手本忠臣蔵』を上演して配信しようという企画、今日はその初回である。ゲストに中村壱太郎と市川猿弥が参加。 口上人形(声・猿弥)の登場となり、今…

岡田利規「『未練の幽霊と怪物』の上演の幽霊」

本来であればこの6月にKAAT神奈川芸術劇場で上演される予定であった『未練の幽霊と怪物』の初演は、例にもれず新型コロナウイルスの影響により公演中止になった。それにともない上演される機会を失ったはずのこの新作だが、このたび2日間だけの限定でYouTube…