黒井緑朗のひとりがたり

きままに書きたいことを書き 云いたいことを云う

前進座『一万石の恋』(新国立劇場中劇場)

前進座の創立90周年を記念しての公演。落語の『妾馬』をもとにした山田洋二の脚本による新作コメディである。もとの『妾馬』からは登場人物などの世界をかりているとはいうものの、展開はかなりオリジナルな展開となっており、これからもくりかえし上演され…

十月大歌舞伎第二部(歌舞伎座)

歌舞伎座第二部の三日目。 『時平の七笑』は松本白鸚の藤原時平。 以前も書いたが、この数年での松本白鸚の初役への挑戦ぶりには頭が下がる。二〇一九年に『一条大蔵譚』大蔵卿を四十七年ぶりに演じて大成功したあたりから、昨年三月には『沼津』の平作(こ…

十月大歌舞伎第三部(歌舞伎座)

歌舞伎座の第三部初日を観る。 『松竹梅湯島掛額』は前半はばかばかしいほどのドタバタ喜劇、後半はうってかわってシリアスな人形振りと、ある意味でいかにも歌舞伎らしい演目。 「吉祥院」では誕生日(この日は菊五郎の誕生日)をはじめとする内輪ネタから…

九月大歌舞伎第三部(歌舞伎座)

話題となった九月歌舞伎座の第三部、片岡仁左衛門と坂東玉三郎による『東海道四谷怪談』の千穐楽を観る。 今回は「浪宅」から「隠亡堀」だけというもっともシンプルな上演。三十八年ぶりというこのふたりの『四谷怪談』は、忠臣蔵外伝という世界も、鶴屋南北…

オリンピック開会式が問う多様性とは

多様性とはなにかということを見るものに考えさせるという意味では、今回の東京オリンピックの開会式もすくなくない意味があったと言ってよいだろう。だがそれは、この開会式が多様性とそのポジティブな可能性について表現できていたかというと、それはまた…

七月大歌舞伎第二部(歌舞伎座)

七月歌舞伎座の第二部は二演目。『鈴ヶ森』にダブルキャストで出演予定であった中村吉右衛門はまだ療養継続中ということで休演、回復をこころから祈るばかり。 『身替座禅』の山蔭右京を、78歳の松本白鸚が初役で演じる。白鸚は70歳をすぎてからも初役や数十…

七月大歌舞伎第三部(歌舞伎座)

歌舞伎座第三部は『鳴神不動北山櫻』の三年ぶりの上演。そして、團十郎襲名が延期になった市川海老蔵の、二年ぶりの歌舞伎座出演でもある。その初日を観る。 海老蔵が現在のかたちにまとめあげて上演してから七回目の上演となるが、前回までは四時間を要する…

六月大歌舞伎第三部(歌舞伎座)

六月大歌舞伎の第三部は『京人形』と新作の『日蓮』の二本立て。 『京人形』は白鸚の甚五郎が面白い。 白鸚の所作は「幸四郎風」「白鸚風」としか言いようのない独特の動きが特徴だが、その小気味のよいクイックの効いた所作が自然にユーモラスな空気をつく…

六月大歌舞伎第二部(歌舞伎座)

今月の第二部は、四月に前半が上演された『桜姫東文章』の「下の巻」である。 なかなか収束しないコロナウイルスの影響のなか半数に減らされた客席は、片岡仁左衛門と坂東玉三郎の当たり芸を観ようとおおくの観客で埋まっていた。 幕が開く前に、口上があり…

四月大歌舞伎第三部(歌舞伎座)

第三部は、片岡仁左衛門・坂東玉三郎のふたりによって『桜姫東文章』が上演された。この組み合わせでは数十年ぶりとなり、いわゆる「孝玉コンビ」として伝説となった舞台ふたたびということで、初日があけるまえから話題になっていた。ただし今月は発端の「…