黒井緑朗のひとりがたり

きままに書きたいことを書き 云いたいことを云う

八月納涼歌舞伎第一部(歌舞伎座)

八月恒例の納涼歌舞伎は、例年の通りの三部制。そのなかで唯一古典を出すのが第一部。 『伽羅先代萩』は「御殿」から。主役の政岡に七之助が初役で挑戦。いつもながら言語明晰、意味明瞭であることがよく、ひとつとしてそのセリフが疎かにされることない。「…

『ハウス・ジャック・ビルト』(ラース・フォン・トリアー監督)

なにかと物議を醸すラース・フォン・トリアー監督の最新作『ハウス・ジャック・ビルト』を観る。 カンヌ国際映画祭での上映では少なくない退出者が出た、などという前情報もあり、さぞや凄惨なシーンでうめつくされたシリアルキラーのものがたりなのかと思い…

地点『三人姉妹』(KAAT)

横浜のKAATで上演された地点版『三人姉妹』の再演。観たいと思っていたが、ようやく叶っての観劇。 コミュニケーションの成立にたいする根本的な懐疑を孕んだチェーホフの古典作品。這いずりまわる俳優の身体の「なめらかでなさ」とも言うべきさまが、その困…

七月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

歌舞伎座の昼の部は「歌舞伎十八番」からは『外郎売』、「新歌舞伎十八番」からは『高時』と『素襖落』と、成田屋ゆかりの演目がならぶ。 『高時』は市川右團次の北条高時で。 いわゆる活歴物のひとつとして河竹黙阿弥によってつくられた本作だが、皮肉なこ…

六月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

六月歌舞伎座夜の部は、三谷幸喜作・演出による新作歌舞伎。みなもと太郎のマンガ『風雲児たち』を原作に、大黒屋光太夫らのロシア行きをめぐるくだりを歌舞伎として上演するものである。 開幕五分前になると幕が開き、いちめんに海原がひろがる舞台があらわ…

六月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

こんにちの丸本歌舞伎におけるツートップともいうべき、中村吉右衛門と片岡仁左衛門。古典作品を現代のドラマとして更新することにかけるこのふたりが、それぞれの特色をみせ挑む『石切梶原』と『封印切』が期待に違わず見ものである。 『石切梶原』はこのと…

『Taking Sides』(本多劇場)

加藤健一事務所の主催公演。ロナルド・ハーウッドが一九九五年に発表した、ヴィルヘルム・フルトヴェングラーの非ナチ化裁判にまつわる戯曲。おなじハーウッドの『ドレッサー』ほど有名でも完成度が高いわけでもないが、いまの時代に上演する意義のある作品…

小田尚稔の演劇『善悪のむこうがわ』(ボルボスタジオ青山)

「美術手帖×VOLVO ART PROJECT」として、ボルボスタジオ青山で小田尚稔・作、演出の『善悪のむこうがわ』が初演された。その五月十五日の初日を観る。 哲学の古典的著作からモチーフを得て作品をつくりあげてきた小田尚稔が今回選んだのは、キリスト教的な道…

團菊祭五月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

團菊祭夜の部。大看板の二人は孫の初舞台につきあうのみで、ほぼ若手中心の公演である。なかでも、昼の部で海老蔵が『勧進帳』を出したのにたいし、夜は菊之助が『娘道成寺』で新境地を見せる。 令和のはじまりを祝って松緑と時蔵が舞う『鶴寿千歳』につづい…

團菊祭五月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

令和に元号がかわってはじめての歌舞伎座。五月の歌舞伎座はいわゆる「團菊祭」と銘打たれた公演だが、この数年は團菊にとっての重要なレパートリーを次世代の團菊に受け継いでいくさまを目のあたりにすることができる。昼の部は、若手中心の『対面』、次世…