黒井緑朗のひとりがたり

きままに書きたいことを書き 云いたいことを云う

オリンピック開会式が問う多様性とは

多様性とはなにかということを見るものに考えさせるという意味では、今回の東京オリンピックの開会式もすくなくない意味があったと言ってよいだろう。だがそれは、この開会式が多様性とそのポジティブな可能性について表現できていたかというと、それはまた…

七月大歌舞伎第二部(歌舞伎座)

七月歌舞伎座の第二部は二演目。『鈴ヶ森』にダブルキャストで出演予定であった中村吉右衛門はまだ療養継続中ということで休演、回復をこころから祈るばかり。 『身替座禅』の山蔭右京を、78歳の松本白鸚が初役で演じる。白鸚は70歳をすぎてからも初役や数十…

七月大歌舞伎第三部(歌舞伎座)

歌舞伎座第三部は『鳴神不動北山櫻』の三年ぶりの上演。そして、團十郎襲名が延期になった市川海老蔵の、二年ぶりの歌舞伎座出演でもある。その初日を観る。 海老蔵が現在のかたちにまとめあげて上演してから七回目の上演となるが、前回までは四時間を要する…

六月大歌舞伎第三部(歌舞伎座)

六月大歌舞伎の第三部は『京人形』と新作の『日蓮』の二本立て。 『京人形』は白鸚の甚五郎が面白い。 白鸚の所作は「幸四郎風」「白鸚風」としか言いようのない独特の動きが特徴だが、その小気味のよいクイックの効いた所作が自然にユーモラスな空気をつく…

六月大歌舞伎第二部(歌舞伎座)

今月の第二部は、四月に前半が上演された『桜姫東文章』の「下の巻」である。 なかなか収束しないコロナウイルスの影響のなか半数に減らされた客席は、片岡仁左衛門と坂東玉三郎の当たり芸を観ようとおおくの観客で埋まっていた。 幕が開く前に、口上があり…

四月大歌舞伎第三部(歌舞伎座)

第三部は、片岡仁左衛門・坂東玉三郎のふたりによって『桜姫東文章』が上演された。この組み合わせでは数十年ぶりとなり、いわゆる「孝玉コンビ」として伝説となった舞台ふたたびということで、初日があけるまえから話題になっていた。ただし今月は発端の「…

四月大歌舞伎第一部(歌舞伎座)

四月大歌舞伎は『小鍛冶』から。能の『小鍛冶』をもとにした舞踊劇で、歌舞伎演目としては1997年以来ひさびさの上演。澤瀉屋ゆかりのこの作品、シテである童子実は稲荷明神を市川猿之助、小鍛冶を市川中車が演じる。 幕があがり一面の紅葉という季節感のなさ…

『夜鳴きうぐいす』『イオランタ』(新国立劇場大劇場)

けっしてメジャーなレパートリー作品とはいいがたいふたつの演目を抱き合わせた、意欲的なプログラムが新国立劇場のオペラのラインナップにならんだ。ストラヴィンスキーの『夜鳴きうぐいす』とチャイコフスキーの『イオランタ』である。 ともにロシアの作曲…

三月大歌舞伎第三部(歌舞伎座)

第三部のはじめは中村吉右衛門が石川五右衛門を演じる『楼門五三桐』である。 秋以降、手術をするなど本調子ではない吉右衛門だが、本来のベストコンディションにはまだまだ戻っていないようだ。しかしそれでも五右衛門にもとめられるおおきさ、手強さといっ…

三月大歌舞伎第二部(歌舞伎座)

その見事さを言いあらわすために「奇跡的だ」などという月並みな言葉をもちいることさえためらわれる舞台に出会うことがあるが、今月の歌舞伎座の『熊谷陣屋』は、やはりそれでも「奇跡的だ」と言わざるを得ない感動的なものだった。 それは、熊谷直実を演じ…

二月大歌舞伎第二部(歌舞伎座)

歌舞伎座の第二部は、ひさしぶりの片岡仁左衛門・坂東玉三郎の共演が話題の二演目。 『於染久松色読取』は二〇一八年三月におなじ玉三郎のお六、仁左衛門の喜兵衛で上演された。「莨屋」「油屋」の二場の前に、今月は「妙見」の場がつけくわえられた。全体に…

寿初春大歌舞伎第二部(歌舞伎座)

年が明けた歌舞伎座は、先月までの四部制をあらため三部制となった。それぞれ短い休憩をはさんで二演目づつ。第二部の初日を観る。 『夕霧名残の正月』が意外といっては失礼ながらなかなかのよい舞台である。 ひとつには、昨年十一月に亡くなったばかりの坂…

コロナ禍での会食は何人までに制限すべきか

国民には5人以上の会食を控えるように要請しておきながら、みずからは毎日のように夜の会食をつづけている菅総理大臣に批判があつまっている。政府がしめした5人という人数が説得力をもっていないため、批判が殺到するのは当然と言える。 西村経済再生相は1…

十二月大歌舞伎第三部(歌舞伎座)

師走の歌舞伎座にならんだ演目のうち、唯一の義太夫狂言が第三部の『傾城反魂香』いわゆる「吃又」である。台本・演出の完成度もたかく、おおくの名優が素晴らしい舞台をのこしてきた名作。 猿之助の女房おとくはこれまでにも、松本白鸚や中村鴈治郎を相手に…

十二月大歌舞伎第二部(歌舞伎座)

新型コロナウイルスに翻弄された今年ものこるところひと月。師走の歌舞伎座も再開以来の四部制である。その第二部をまずは観る。 『心中月夜星野屋』は二年前の納涼歌舞伎に初演された新作歌舞伎。昨年は金丸座で、そして今年は歌舞伎座でと、新作としては異…

『異邦人の庭』(演劇専用小劇場 BLOCH)

昨年名古屋で初演された刈馬カオスの『異邦人の庭』を、札幌劇場祭TGR2020参加作品としてOrgofA(オルオブエー)が上演。最終日11月29日の昼公演を観る。傑作の戯曲と、それにふさわしい名演であった。 上演時間60分のこの作品は、ある死刑囚と彼女を取材す…

小田尚稔『罪と愛』(アゴラ劇場)

小田尚稔の演劇を前回観たのは、新型コロナウィルスの影響でつぎつぎと舞台公演が中止になっていた3月。8か月を経て、あのころとおなじように感染者が急増しつつあるなかで観ることになった今回の舞台は、タイトルからわかるようにドストエフスキーの『罪と…

十一月歌舞伎公演第一部『俊寛』(国立劇場)

国立劇場第一部は吉右衛門の『俊寛』が「清盛館」つきで上演。 いつもは「鬼界ヶ島」の場のみの上演だが、俊寛が流刑の島にひとりで残る決心をするきっかけとなる妻・東屋の悲劇を「清盛館」で見せておくことで、いっそうドラマの構造が明確になる。のちに瀬…

十一月歌舞伎公演第ニ部『毛谷村』(国立劇場)

今月も国立劇場は二部制で、それぞれ現代を代表する名優が本格な舞台を見せている。第二部は片岡仁左衛門が六助を演じる『毛谷村』である。 いつも上演される「六助住家」の前に、今月は「杉坂墓所」の場が出る。ここは話の筋をとおすだけのなんということも…

十月大歌舞伎第二部(歌舞伎座)

四部制で再開して三ヶ月目の歌舞伎座。その第二部を観る。 『双蝶々曲輪日記』のうちでも屈指の名場面である「引窓」が先月上演されたのにつづき、今月は松本白鸚、松本幸四郎で「角力場」が出る。演劇的なドラマというよりも相撲取りの意地と格を見せるこの…

九月大歌舞伎第三部(歌舞伎座)

再開して二月目となる歌舞伎座。今月も一演目づつの四部構成である。 ここのところ定着した「秀山祭」の看板がないのは残念ではあるが、吉右衛門一座を中心とした見ごたえのある演目がならぶ。そのなかから第三部を観る。 『双蝶々曲輪日記』の「引窓」は、…

八月花形歌舞伎(歌舞伎座)

今年の二月以来、ひさびさに開場した歌舞伎座。コロナウィルスへの感染対策として、興行形態をおおきく変更しての再スタートとなった。観客の鑑賞や入場にかんしてのみならず、楽屋での徹底した対策など、これでもかと考えられているようだ。 筋書や食事の販…

川島素晴 plays... vol.2 “無音” (旧東京音楽学校奏楽堂)

梅雨も明けた真夏日、緑にかこまれた上野の旧奏楽堂。作曲家・川島素晴プロデュースのいっぷうかわったコンサートが開催された。ジョン・ケージの代名詞ともなった(それはそれで本人は不本意だっただろうが)名曲「4'33"」をはじめとして、川島自身の新作も…

図夢歌舞伎『忠臣蔵』(Streaming+)

図夢歌舞伎と銘打って、松本幸四郎を中心に、リモートでの歌舞伎上演をさぐる取り組み。五回にわけて『仮名手本忠臣蔵』を上演して配信しようという企画、今日はその初回である。ゲストに中村壱太郎と市川猿弥が参加。 口上人形(声・猿弥)の登場となり、今…

岡田利規「『未練の幽霊と怪物』の上演の幽霊」

本来であればこの6月にKAAT神奈川芸術劇場で上演される予定であった『未練の幽霊と怪物』の初演は、例にもれず新型コロナウイルスの影響により公演中止になった。それにともない上演される機会を失ったはずのこの新作だが、このたび2日間だけの限定でYouTube…

「主人が」は「わたしの夫が」に置きかえられるのか

某タレントの恥ずかしいことこのうえない破廉恥な不倫騒動について、その妻である女優が「主人の無自覚な行動により、……」と謝罪文を発表した。この「うちの主人」という表現にたいして、ちいさな炎上とも言うべき反応があった。いまの時代にあって「主人」…

眼に見えない他者とむきあうために

二〇一九年の十一月にその発生が発見され、二〇二〇年三月の段階でも世界的に流行の兆しを見せている新型コロナウイルスがわたしたちの社会にもたらした影響は、おおくのひとにとって、はじめの想像をはるかにこえたものになった。 コンサートや演劇、スポー…

二月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

夜の部も十三世片岡仁左衛門の追善演目がいくつもならぶ。だが、小品というしかない演目ばかりで、腰を据えて観られる歌舞伎らしい演目は『文七元結』だけという、なんともさみしい番組である。 『八陣守護城』は忠義の臣・加藤清正=佐藤正清のおおきさを見…

二月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

歌舞伎座の昼の部は『菅原伝授手習鑑』の半通し。菅原道真の身にふりかかる悲劇をえがいたこの傑作義太夫狂言の前半部である。十三世片岡仁左衛門の二十七回忌追善として、当代の仁左衛門が菅丞相を五年ぶりに演じる。 「加茂堤」は全員が初役という新鮮な一…

新春浅草歌舞伎夜の部(浅草公会堂)

若手の研鑽の場という当初の思惑をはるかにこえて、近年ではチケットもなかなか入手しづらくなった新春の浅草公会堂。 本来であれば「まだ早かろう」という役々を、勉強会としてではなく、ひと月のあいだ商業ベースに乗って演じられるというのは、若い役者に…