黒井緑朗のひとりがたり

きままに書きたいことを書き 云いたいことを云う

歌舞伎/能

十一月吉例顔見世大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

十三代目團十郎襲名ひと月目の昼の部。あわせて市川新之助の襲名披露も行われる。この日は都合により『外郎売』から観る。 『外郎売』はその新・新之助の襲名披露となる初舞台。二年半も待たされてのようやくの「初舞台」ということで、演じる方も観る方も感…

十一月吉例顔見世大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

いよいよあたらしい團十郎が誕生する。十一月の歌舞伎座は十三代目市川團十郎襲名披露興行のひと月目である。コロナウィルス感染拡大の影響により延期されていた襲名が、このように無事にとりおこなわれたことをまずは祝いたい。 『矢の根』は松本幸四郎の曾…

芸術祭十月大歌舞伎第一部(歌舞伎座)

まずもって、見ごたえのある傑出した新作歌舞伎がうまれたと言ってよい。それも再演に耐えうる骨太な魅力をもった作品がである。もちろん原作となる神田松鯉の講談がよくできているということもあるだろうが、それ以上に作り手のていねいな仕事がいたるとこ…

通し狂言『義経千本桜』Aプロ(国立劇場)

国立劇場は『義経千本桜』の通し上演。全体を三部にわけて、主要な忠信、知盛、権太の三役(源九郎狐をべつに数えれば四役)のすべてを尾上菊之助が演じるという企画。新型コロナウィルスが拡大しはじめた二年半前に中止になり、残念ながら無観客の映像収録…

秀山祭九月大歌舞伎第一部(歌舞伎座)

九月大歌舞伎の第一部。 『白鷺城異聞』は、ご当地ものの「顔見世狂言」の域を出ないもの。それぞれの役者の特性が活きた配役ではあるが、薄味な展開に終始しするのが残念。個々の役者のていねいな芝居はべつにして、作品としてはとくに面白いところもないの…

秀山祭九月大歌舞伎第三部(歌舞伎座)

昨年は吉右衛門が療養中で参加がならず「秀山祭」を名乗ることなく開催された九月歌舞伎座だが、今年は吉右衛門の一周忌として「秀山祭」が開催される。なんとも複雑で寂しい気持ちになる。今後は初代吉右衛門のみならず、二世吉右衛門をもしのぶ機会として…

七月大歌舞伎第二部(歌舞伎座)

七月大歌舞伎の第二部はこの時期にふさわしい夏芝居『夏祭浪花鑑』である。数か月後には團十郎の大名跡を襲名することになる市川海老蔵はすでになんどか団七を演じているが、これまでとはまたちがった印象を観るものにあたえている。 ほかの役者が演じるそれ…

七月大歌舞伎第一部(歌舞伎座)

『當世流小栗判官』のひさびさの上演。 上演時間の長い通し狂言を三部制の枠にあわせて刈り込む市川猿之助の試みも、これで何作品目になるだろうか。人気の高い小栗判官を短くカットすることには勇気もアイディアも必要だっただろうが、結果的にすっきりとま…

六月大歌舞伎第三部(歌舞伎座)

六月の歌舞伎座第三部は、はじめは片岡仁左衛門と坂東玉三郎による『与話情浮名横櫛』が予定されていたが、チケット発売の段になって仁左衛門の休演が発表され、演目そのものが『ふるあめりかに袖はぬらさじ』に変更になった。演目そのものが一部のチケット…

團菊祭五月大歌舞伎第三部(歌舞伎座)

目が覚めるようなといういう言葉がふさわしい、あざやかで若々しい『白波五人男』が見もの。尾上右近の弁天小僧と坂東巳之助の南郷力丸をはじめとして、この作品の次世代のあらたな可能性をも感じさせる充実ぶりに満足した。 いうまでもなくこの作品は音羽屋…

四月大歌舞伎第三部(歌舞伎座)

歌舞伎座第三部の『ぢいさんばあさん』が「珠玉の」という言葉のふさわしい傑作である。派手ではないがよくできた戯曲で、いわゆる新歌舞伎とよばれるジャンルの作品のなかでは比較的よく上演される。しかし役者によってこうも印象がかわるものかとあらため…

四月大歌舞伎第一部(歌舞伎座)

歌舞伎座の第一部は、映画やドラマ、舞台などでもおおくの作品が作られてきた天一坊のものがたり。休憩をのぞいて約二時間、通し狂言としては短めではあるがなかなかちょうどよい構成で楽しめる。ここしばらく猿之助はいくつもの作品において、三部制の制約…

四月大歌舞伎第二部(歌舞伎座)

四月の歌舞伎座は、桜の季節にふさわしい演目がならんだ。第二部は松本幸四郎による二度目の『荒川の佐吉』と、きわめてめずらしい所作事『時鳥花有里』の二本立て。 『荒川の佐吉』はいうまでもなく真山青果の代表作のひとつ。真山青果の歌舞伎はどれをとっ…

三月大歌舞伎第二部(歌舞伎座)

三月歌舞伎座の第二部は『河内山』と『芝浜』の二本立て。 『河内山』を片岡仁左衛門が東京で演じるのは、平成二十四年の新橋演舞場での勘九郎襲名興行以来ということで、じつに十年ぶり。河内山の演じかたにはおおきくわけて愛嬌で見せる型と、悪の凄みをき…

『近江源氏先陣館-盛綱陣屋-』(国立劇場)

国立劇場の『盛綱陣屋』の初日を観る。直接教えを受けたということではないらしいが、亡き岳父・吉右衛門の得意とした時代物の大役に尾上菊之助がいどむという、次世代の歌舞伎を考える意味では必見の舞台。期待以上に見ごたえのあるものになっていた。 菊之…

二月大歌舞伎第一部(歌舞伎座)

二月歌舞伎座の第一部は『元禄忠臣蔵』のなかでも屈指の名作「御浜御殿綱豊卿」である。この演目はいまでは片岡仁左衛門が傑出しているが、今月の中村梅玉の演じる綱豊卿は、仁左衛門のそれとはまったくことなるもうひとつの規範とも言うべきもので、中村梅…

二月大歌舞伎第二部(歌舞伎座)

歌舞伎座第二部は、片岡仁左衛門一世一代と銘打っての『渡海屋・大物浦』である。中村吉右衛門亡きあと、義太夫狂言において無二の存在となった仁左衛門のこのうえなく充実した芸が、感動的な舞台をつくりあげていた。それは、古典と現代性の融合をめざして…

二月大歌舞伎第三部(歌舞伎座)

二月歌舞伎座の第三部は、二十九年ぶりの上演となる『鼠小紋春着雛形』が面白い。現代的な魅力にあふれている尾上菊之助初役の鼠小僧をはじめ、見ごたえある舞台になっている。 菊之助の鼠小僧(幸蔵)は、一歩間違えば薄情に見える。百両という金をだまし取…

寿初春大歌舞伎第一部(歌舞伎座)

新春の歌舞伎座第一部は、なかなか爽快な『一条大蔵譚』を堪能した。 中村勘九郎の大蔵卿は阿呆を見せながら、しかしそれが笑いにこびすぎておらず嫌味がなくてよい。「桧垣」の引っ込みにおける花道七三での顔隠しも、さらり扇をひらき流れるように自然にみ…

寿初春大歌舞伎第三部(歌舞伎座)

新春の歌舞伎座は正月らしい演目がずらりとならび、その出演者の顔ぶれも若い世代でにぎわっている。 『岩戸の景清』は『難有浅草開景清』で「ありがたやはながたつどうあけのかげきよ」と読ませる外題。もとは『難有御江戸景清』という河竹黙阿弥の芝居だが…

十二月大歌舞伎第一部(歌舞伎座)

師走の歌舞伎座の第一部は市川猿之助の『新版伊達の十役』である。 三代猿之助四十八番の内とあるが、いうまでもなく先代猿之助の『伊達の十役』は本来は4時間を超えるものであり、今月のように2時間あまりの限られた枠で上演される演目ではない。おのずとカ…

吉例顔見世大歌舞伎第三部(歌舞伎座)

歌舞伎座第三部の『花競忠臣顔見勢』は、いくつかの意味で意義深いものであった。 まず、コロナウィルスの感染対策のために出演者たちは、三部にわかれた各部をかけもちして出演することができない。そのため、いくつもの幕にわたって出番のある役を必要とす…

『一谷嫩軍記』(国立劇場)

霜月の国立劇場は『一谷嫩軍記』より「御影浜」と「熊谷陣屋」の二幕。毎年のように上演される「熊谷陣屋」だが、後半に登場する弥陀六がどのようにして陣屋を訪れるにいたったか、それをえがく「御影浜」の場が上演されるのはめずらしい。なんと四九年ぶり…

吉例顔見世大歌舞伎第一部(歌舞伎座)

顔見世と銘うった霜月の歌舞伎座第一部は『神の鳥』から。6年前に兵庫県豊岡市の永楽館でおなじく片岡愛之助と中村壱太郎によって初演された新作が、数年後の再演をへて歌舞伎座版として手をいれて再々演となる。 幕が開くと一面の浅葱幕。奴たちの渡りゼリ…

十月大歌舞伎第二部(歌舞伎座)

歌舞伎座第二部の三日目。 『時平の七笑』は松本白鸚の藤原時平。 以前も書いたが、この数年での松本白鸚の初役への挑戦ぶりには頭が下がる。二〇一九年に『一条大蔵譚』大蔵卿を四十七年ぶりに演じて大成功したあたりから、昨年三月には『沼津』の平作(こ…

十月大歌舞伎第三部(歌舞伎座)

歌舞伎座の第三部初日を観る。 『松竹梅湯島掛額』は前半はばかばかしいほどのドタバタ喜劇、後半はうってかわってシリアスな人形振りと、ある意味でいかにも歌舞伎らしい演目。 「吉祥院」では誕生日(この日は菊五郎の誕生日)をはじめとする内輪ネタから…

九月大歌舞伎第三部(歌舞伎座)

話題となった九月歌舞伎座の第三部、片岡仁左衛門と坂東玉三郎による『東海道四谷怪談』の千穐楽を観る。 今回は「浪宅」から「隠亡堀」だけというもっともシンプルな上演。三十八年ぶりというこのふたりの『四谷怪談』は、忠臣蔵外伝という世界も、鶴屋南北…

七月大歌舞伎第二部(歌舞伎座)

七月歌舞伎座の第二部は二演目。『鈴ヶ森』にダブルキャストで出演予定であった中村吉右衛門はまだ療養継続中ということで休演、回復をこころから祈るばかり。 『身替座禅』の山蔭右京を、78歳の松本白鸚が初役で演じる。白鸚は70歳をすぎてからも初役や数十…

七月大歌舞伎第三部(歌舞伎座)

歌舞伎座第三部は『鳴神不動北山櫻』の三年ぶりの上演。そして、團十郎襲名が延期になった市川海老蔵の、二年ぶりの歌舞伎座出演でもある。その初日を観る。 海老蔵が現在のかたちにまとめあげて上演してから七回目の上演となるが、前回までは四時間を要する…

六月大歌舞伎第三部(歌舞伎座)

六月大歌舞伎の第三部は『京人形』と新作の『日蓮』の二本立て。 『京人形』は白鸚の甚五郎が面白い。 白鸚の所作は「幸四郎風」「白鸚風」としか言いようのない独特の動きが特徴だが、その小気味のよいクイックの効いた所作が自然にユーモラスな空気をつく…