黒井緑朗のひとりがたり

きままに書きたいことを書き 云いたいことを云う

『オイディプス』(シアターコクーン)

ギリシャ悲劇のなかでも、アリストテレスをはじめその最高峰としてあげることのおおいソフォクレスの『オイディプス王』。この傑作悲劇をイギリスの演出家マシュー・ダンスターがみずから翻案し、さまざまなジャンルの俳優をそろえて現代に問う舞台である。 …

芸術祭十月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

歌舞伎座夜の部はまず『三人吉三巴白波』が通し上演。菊五郎劇団の若手を中心とした配役で、主役のひとりであるお嬢吉三は尾上松也と中村梅枝のダブルキャスト。二日目のこの日は梅枝が演じる。 有名な「大川端庚申塚の場」は毎年のように上演されるが、この…

芸術祭十月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

歌舞伎座昼の部の初日を観る。 『廓三番叟』で幕が開く。いわゆるご祝儀ものたる「三番叟」もののひとつで、その登場人物を廓の傾城、新造、太鼓持ちにあてはめた趣向。なかでも新造を踊る梅枝のうまさが目をひく。古風な魅力と言われつづけた梅枝だが、この…

国立能楽堂『卒都婆小町』(国立能楽堂)

梅若実のシテで『卒都婆小町』を観る。 いわゆる老女物といわれるもののなかでも『卒都婆小町』は哲学的な重厚さのみならず、音楽的、演劇的な変化に富んだドラマティックな一曲。僧をも感服させるほどの仏教的教理につうじていながら、なおも深草少将の霊に…

仁左衛門の『勧進帳』(歌舞伎座)

夜の部の『勧進帳』は日替わりでのダブルキャスト。幸四郎の弁慶についてはさきに書いたが、たいする仁左衛門の弁慶が期待にたがわずきわめて素晴らしいものであった。 ※幸四郎の弁慶についてはこちらで書いたのでお読みください。 秀山祭九月大歌舞伎夜の部…

『愛と哀しみのシャーロック・ホームズ』(世田谷パブリックシアター)

コナン・ドイルが生みだした世界でもっとも有名な探偵であるシャーロック・ホームズは、ドイルの残したいわゆる「聖典」とよばれるオリジナル作品のほかにも、数多くの贋作やパロディ、パスティーシュがつくられてきた。この『愛と哀しみのシャーロック・ホ…

秀山祭九月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

秀山祭昼の部。主宰の吉右衛門が『湯殿の長兵衛』を幸四郎、松緑という次世代へ継承し、みずからは万全の布陣でのぞんだ『沼津』で芸の円熟を見せる。 『幡随長兵衛』は幸四郎の長兵衛で。序幕の村山座の場から、表向きは腰が低くとも、有無を言わさず場を支…

秀山祭九月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

ここ数年は、中村吉右衛門が後継者にその芸を残す場として機能している、九月恒例の秀山祭の夜の部。今年は仁左衛門も加わった重厚な座組で、ひさびさに古典作品ばかりがならんだ歌舞伎座を堪能できる。 『菅原伝授手習鑑』の「寺子屋」はなんども演じてきた…

八月納涼歌舞伎第三部(歌舞伎座)

第三部は、『新版雪之丞変化』一本。映画やドラマなどで昔から親しまれてきたこの作品は、歌舞伎でも近年はおもに澤瀉屋系の役者によっていくたびもとりあげられてきた。花形役者の中村雪太郎(のちに中村雪之丞)が、みずからの両親の敵を討つという基本的…

小田尚稔の演劇『悪について』(RAFT)

小田尚稔の演劇シリーズは、『悪について』(脚本/演出・小田尚稔)の再演。その初日を観る。 舞台にはいつものチェア、コート掛けのほかには白い布団のシンプルなベッド。天井からは照明器具がぶら下がっている。出演は香川知恵子、小林毅大、鈴木睦海、長…