黒井緑朗のひとりがたり

きままに書きたいことを書き 云いたいことを云う

四月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

平成最後となる歌舞伎座は、ベテラン幹部と次世代それぞれの見せ場のある狂言立て。昼の部は出番はわずかではあるが存在感を示す藤十郎、菊五郎、吉右衛門らの芸と、次世代の堅実な実力派による古典。 『平成代名残絵巻』は新作の絵巻物ということで、内容は…

三月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

『盛綱陣屋』は仁左衛門の盛綱。なんども演じたあたり役である。その芝居のドラマを現代の観客にもわかりやすく、しかしあくまで型のなかに求めるという仁左衛門らしさが生かされた傑出した舞台。 和田兵衛とのやりとりは表面上はぐっとおさえてはいるが、言…

国立劇場三月歌舞伎公演(国立劇場・小劇場)

三月の国立劇場はいつもとちがって小劇場での公演。そして、上置きの中村又五郎以外はいずれの演目とも初役ぞろいという新鮮な舞台。 『御浜御殿』は真山青果の代表作『元禄忠臣蔵』のなかでもきわめて上演頻度が高いもの。近年では片岡仁左衛門があたり役と…

小田尚稔の演劇『是でいいのだ〜Es ist gut』(三鷹SCOOL)

小田尚稔作・演出の「是でいいのだ」二日目をを観る。出演は串尾一輝、善長まりも、橋本清、南香好、渡邊まな実。 舞台にはいつものごとく、電車のつり革や折りたたみ傘がぶら下がるコート掛け、ちいさな卓袱台と座布団、椅子、天井から吊り下がるランプ、な…

三月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

三月歌舞伎座の昼の部は、あまり上演されないめずらしい演目や場がならぶ。 『女鳴神』はいわずとしれた歌舞伎十八番『鳴神』の女版。初代團十郎が『鳴神』を初演した元禄九年、おなじ年にすでに上演されたもので、今回は二十七年ぶりの上演。神通力で雨が降…

新国立劇場『紫苑物語』(新国立劇場オペラパレス)

佐々木幹郎・台本、西村昭・作曲の『紫苑物語』の世界初演。大野和士の指揮、笈田ヨシの演出で。 石川淳の同名の傑作中編を原作としたこのオペラは、今シーズンから新国立劇場オペラ部門の芸術監督に就任した大野和士の、新国立劇場から世界へ発信できるオペ…

実験舞踊vol.1『R.O.O.M.』/『鏡の中の鏡』(吉祥寺シアター)

ずっと観たいと思っていたNoismの、最新作の東京公演を観る。実験舞踊vol.1『R.O.O.M.』と『鏡の中の鏡』の二本立て。演出振付・空間・照明は金森穣。高さが一間半程度の、プロセニアム側以外のすべての面を白く塗られたスクエアな空間が共通の舞台である。 …

二月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

二月の夜の部は『熊谷陣屋』から。 近年では毎年のように白鷗か吉右衛門のいずれかが演じているように感じるが、今月は吉右衛門の熊谷で。花道の出はあえて気持ちを出さず、数珠をしまうのもきわめて最小限の動き。それがかえって悲痛な空気を醸し出している…

二月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

今月は初世尾上辰之助(三世尾上松緑)の三十三回忌として、ゆかりのある狂言だて。故・辰之助の盟友であった菊五郎や子息の松緑がそのあたり役(「鮓屋」は辰之助は若い頃にやっただけなので、祖父二世松緑のあたり役か)を演じる。 『義経千本桜』から「鮓…

海老蔵の市川團十郎襲名が決定

十一代目市川海老蔵が、来年(二〇二〇年)の五月に市川團十郎の大名跡を十三代目として襲名することが発表された。成田屋の嫡男としては、いずれはそうなるであろうことは明らかであったにせよ、正式に発表され喜ばしいことこのうえない。 歌舞伎の世界に存…