黒井緑朗のひとりがたり

きままに書きたいことを書き 云いたいことを云う

寿初春大歌舞伎第三部(歌舞伎座)

新春の歌舞伎座は正月らしい演目がずらりとならび、その出演者の顔ぶれも若い世代でにぎわっている。 『岩戸の景清』は『難有浅草開景清』で「ありがたやはながたつどうあけのかげきよ」と読ませる外題。もとは『難有御江戸景清』という河竹黙阿弥の芝居だが…

小田尚稔の演劇『レクイヱム』(SCOOL)

今年最後の観劇に、小田尚稔の演劇『レクイヱム』を選んだ。独特の発話法と劇作で濃密な世界をつくりあげる劇作家/演出家・小田尚稔の、またあらたな境地を垣間見るような、期待にたがわないよい舞台であった。 アクティングエリアの中央にはカーペットが敷…

オペラ『箱』世界初演(サンパール荒川)

作・角直之、作曲・永井秀和のオペラ『箱』の初演を観た。きわめて古典的な構造と現代的な問題意識をあわせもった意欲的な作品の誕生に立ち会えたことに感謝。 過保護な兄・啓と盲目の姉・優の過保護なまでの世話によって、《箱》のなかでなかば監禁状態で育…

十二月大歌舞伎第一部(歌舞伎座)

師走の歌舞伎座の第一部は市川猿之助の『新版伊達の十役』である。 三代猿之助四十八番の内とあるが、いうまでもなく先代猿之助の『伊達の十役』は本来は4時間を超えるものであり、今月のように2時間あまりの限られた枠で上演される演目ではない。おのずとカ…

吉例顔見世大歌舞伎第三部(歌舞伎座)

歌舞伎座第三部の『花競忠臣顔見勢』は、いくつかの意味で意義深いものであった。 まず、コロナウィルスの感染対策のために出演者たちは、三部にわかれた各部をかけもちして出演することができない。そのため、いくつもの幕にわたって出番のある役を必要とす…

『一谷嫩軍記』(国立劇場)

霜月の国立劇場は『一谷嫩軍記』より「御影浜」と「熊谷陣屋」の二幕。毎年のように上演される「熊谷陣屋」だが、後半に登場する弥陀六がどのようにして陣屋を訪れるにいたったか、それをえがく「御影浜」の場が上演されるのはめずらしい。なんと四九年ぶり…

吉例顔見世大歌舞伎第一部(歌舞伎座)

顔見世と銘うった霜月の歌舞伎座第一部は『神の鳥』から。6年前に兵庫県豊岡市の永楽館でおなじく片岡愛之助と中村壱太郎によって初演された新作が、数年後の再演をへて歌舞伎座版として手をいれて再々演となる。 幕が開くと一面の浅葱幕。奴たちの渡りゼリ…

『夕鶴』(東京芸術劇場)

團伊玖磨のオペラ『夕鶴』は、木下順二の同名の戯曲にたいして「一言一句かえないこと」を条件に作曲された。日本人の手によるオペラとしては類を見ないほど再演をかさね、海外の劇場でも上演されている。オペラの演目としてはもはや「古典」といってよいレ…

前進座『一万石の恋』(新国立劇場中劇場)

前進座の創立90周年を記念しての公演。落語の『妾馬』をもとにした山田洋二の脚本による新作コメディである。もとの『妾馬』からは登場人物などの世界をかりているとはいうものの、展開はかなりオリジナルな展開となっており、これからもくりかえし上演され…

十月大歌舞伎第二部(歌舞伎座)

歌舞伎座第二部の三日目。 『時平の七笑』は松本白鸚の藤原時平。 以前も書いたが、この数年での松本白鸚の初役への挑戦ぶりには頭が下がる。二〇一九年に『一条大蔵譚』大蔵卿を四十七年ぶりに演じて大成功したあたりから、昨年三月には『沼津』の平作(こ…