黒井緑朗のひとりがたり

きままに書きたいことを書き 云いたいことを云う

四月大歌舞伎第二部(歌舞伎座)

四月の歌舞伎座は、桜の季節にふさわしい演目がならんだ。第二部は松本幸四郎による二度目の『荒川の佐吉』と、きわめてめずらしい所作事『時鳥花有里』の二本立て。 『荒川の佐吉』はいうまでもなく真山青果の代表作のひとつ。真山青果の歌舞伎はどれをとっ…

三月大歌舞伎第二部(歌舞伎座)

三月歌舞伎座の第二部は『河内山』と『芝浜』の二本立て。 『河内山』を片岡仁左衛門が東京で演じるのは、平成二十四年の新橋演舞場での勘九郎襲名興行以来ということで、じつに十年ぶり。河内山の演じかたにはおおきくわけて愛嬌で見せる型と、悪の凄みをき…

『近江源氏先陣館-盛綱陣屋-』(国立劇場)

国立劇場の『盛綱陣屋』の初日を観る。直接教えを受けたということではないらしいが、亡き岳父・吉右衛門の得意とした時代物の大役に尾上菊之助がいどむという、次世代の歌舞伎を考える意味では必見の舞台。期待以上に見ごたえのあるものになっていた。 菊之…

二月大歌舞伎第一部(歌舞伎座)

二月歌舞伎座の第一部は『元禄忠臣蔵』のなかでも屈指の名作「御浜御殿綱豊卿」である。この演目はいまでは片岡仁左衛門が傑出しているが、今月の中村梅玉の演じる綱豊卿は、仁左衛門のそれとはまったくことなるもうひとつの規範とも言うべきもので、中村梅…

二月大歌舞伎第二部(歌舞伎座)

歌舞伎座第二部は、片岡仁左衛門一世一代と銘打っての『渡海屋・大物浦』である。中村吉右衛門亡きあと、義太夫狂言において無二の存在となった仁左衛門のこのうえなく充実した芸が、感動的な舞台をつくりあげていた。それは、古典と現代性の融合をめざして…

二月大歌舞伎第三部(歌舞伎座)

二月歌舞伎座の第三部は、二十九年ぶりの上演となる『鼠小紋春着雛形』が面白い。現代的な魅力にあふれている尾上菊之助初役の鼠小僧をはじめ、見ごたえある舞台になっている。 菊之助の鼠小僧(幸蔵)は、一歩間違えば薄情に見える。百両という金をだまし取…

青年団『忠臣蔵・武士編』『忠臣蔵・OL編』(アトリエ春風舎)

平田オリザ作の異色な忠臣蔵が上演された。これまでも再演を重ねたさまざまなヴァージョンのうち、『忠臣蔵・武士編』『忠臣蔵・OL編』の同時上演である。日本人の意思決定の過程の切実な問題を、忠臣蔵の世界を借りてコミカルにえがいたこのシリーズ。いま…

寿初春大歌舞伎第一部(歌舞伎座)

新春の歌舞伎座第一部は、なかなか爽快な『一条大蔵譚』を堪能した。 中村勘九郎の大蔵卿は阿呆を見せながら、しかしそれが笑いにこびすぎておらず嫌味がなくてよい。「桧垣」の引っ込みにおける花道七三での顔隠しも、さらり扇をひらき流れるように自然にみ…

寿初春大歌舞伎第三部(歌舞伎座)

新春の歌舞伎座は正月らしい演目がずらりとならび、その出演者の顔ぶれも若い世代でにぎわっている。 『岩戸の景清』は『難有浅草開景清』で「ありがたやはながたつどうあけのかげきよ」と読ませる外題。もとは『難有御江戸景清』という河竹黙阿弥の芝居だが…

小田尚稔の演劇『レクイヱム』(SCOOL)

今年最後の観劇に、小田尚稔の演劇『レクイヱム』を選んだ。独特の発話法と劇作で濃密な世界をつくりあげる劇作家/演出家・小田尚稔の、またあらたな境地を垣間見るような、期待にたがわないよい舞台であった。 アクティングエリアの中央にはカーペットが敷…