黒井緑朗のひとりがたり

きままに書きたいことを書き 云いたいことを云う

『妹背山婦女庭訓』第一部(国立劇場)

初代国立劇場さよなら特別公演と銘打って、二ヶ月連続して『妹背山婦女庭訓』を上演する。今月はその前半部分の半通し。中村時蔵の定高と尾上松緑の大判事、中村梅枝の雛鳥、中村萬太郎の久我之助という、いずれも初役揃いの顔合わせが見もの。しかし「吉野…

秀山祭九月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

二代目中村吉右衛門が亡くなってから、二度目となる秀山祭の季節がやってきた。吉右衛門三回忌追善と銘うたれた公演である。 『金閣寺』は中村米吉の初役となる雪姫が予想以上に素晴らしい。米吉はそのキャリアのはじめの頃は天性のかわいらしさに併せて古風…

劇団アンパサンド『地上の骨』(三鷹市芸術文化センター星のホール)

劇団アンパサンドの『地上の骨』の二日目を観る。作・演出は安藤奎。 舞台中央にはたくさんの書類と文具が置かれた丸テーブル。その上手下手にはそれぞれおなじような長机(正確に言えば互い違いにならべられたひとり用の机なのだが)があり、閉じられたノー…

八月納涼歌舞伎第二部(歌舞伎座)

納涼歌舞伎の第二部を観る。 なんと四十七年ぶりとなる真山青果の『新門辰五郎』の上演。毎年なにかの作品がとりあげられる真山作品のなかにあって、メジャーな題材のわりに近年では上演されない。それにはやはり理由がある。まずは登場人物とものがたりが雑…

ストスパ4th『エゴイズムでつくる本当の弟』(小劇場B1)

演劇ユニット・ストスパの第4回公演『エゴイズムでつくる本当の弟』を観る。作・演出は白鳥雄介。 ものがたりは白鳥自身の家族をモデルとした実話ベースとのこと、はなからそれを作者自身曝け出してみせるという前提。これが徹底している。 問題をかかえる家…

六月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

夜の部は『義経千本桜』の半通し。絶品である片岡仁左衛門の「鮓屋」と、襲名公演ですばらしい成果を見せた松緑のひさびさの「四の切」である。 「木の実」から。なんども目にした仁左衛門の権太は、これまで以上にリアルな演じ方。小金吾へのいいがかりは、…

六月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

六月大歌舞伎の昼の部は『傾城反魂香』のめずらしい澤瀉屋の型での上演。 早々に花道から又平夫婦が登場し、師匠の将監と挨拶を交わすこと。先代猿之助もやらなかった、澤瀉屋につたわる古いやり方だそうだ。これにより弟弟子の修理之助が虎退治で手柄をたて…

團菊祭五月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)

團菊祭夜の部。 『達陀』は尾上松緑が二度目の集慶。歌舞伎座でははじめてとなる。最近の松緑のスタイルどおり、こまかいリアルな表現を排して楷書で力強く攻めるのが好印象。もちろん先月の圧倒的な『連獅子』にはおよばないが、骨太な松緑の芸質に作品があ…

團菊祭五月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

恒例の團菊祭。今年は昼夜二部制での開催で、その昼の部から。 『若き日の信長』が十二代目團十郎の十年祭追善演目として上演される。もうずいぶん昔のことのように感じるが、まだ先代の團十郎がなくなって十年しかたっていないのかとあらためて思う。それに…

川島素晴 plays...vol.5 "自作陶器"

コンセプチュアルなコンサートを企画する作曲家、川島素晴の自主公演を聴いた。チラシの表面を見ているだけでは、とても現代音楽のコンサートとは思われないだろう。川島自身の手による陶器を「楽器」として使用するという試みである。 舞台のうえには中央に…